事例報告 01

多文化共生分野からスタートするD&I 未来を見据えた労働強化
設   立 1961年1月
本社所在地 茨城県
つくばみらい市戸崎1086-4
代 表 者 代表取締役
梅野 伸一郎
従 業 員 数 65名
▼ダイバーシティスコア 取り組み分野・分類
3.多文化共生/人事制度、教育・理解促進

▼支援テーマ
外国籍人材の活用

取り組み背景
工場新設に向けた人材確保が急務となり、外国籍人材の活用を検討することになった。
 D&I推進において多文化共生分野からスタートし、内容理解を深め、企業成長へとつなげていく。
目指す姿
 ●年齢や性別・国籍等を問わず幅広い人材の採用ができるよう、社内外のネットワークを充実させ、人事機能が向上できている状態
 ●すべての社員が働きやすい環境の向上

短期的目標
  1)外国籍人材を含む採用計画の策定
  2)採用手法の選定・外部サポート機関の選定

中長期的目標
  1)選ばれる会社環境づくり
  2)人事評価制度の拡充
  3)外国籍社員を中心とした多様な人材の活躍推進

取組のあしあと
 1.取り組み概要
 
課 題
●採用に関する情報不足。外国籍人材の採用を検討したいが、その方法や採用にいたるアクセス手段・方法が分からない。ネットワークの構築も出来ていない。
●外国籍人材の就労に伴う基礎知識不足のため、自社のPRが上手くいかない。
取 組 ◆外国籍人材の活用に伴う基礎知識習得
◆外国籍人材の採用ルート選定から決定
◆採用計画、人事評価制度内容の検討
効 果 ◆技能実習生・特定技能・高度人材と、外国籍人材の活用も目的によって選択肢があることを学べた。
◆技能実習生が会社に一番フィットしているとの結論に至り、ゴム製造業の支援に明るい監理団体へサポートを依頼するまでに至った。
◆実習制度の改正情報の提供を受け、コンサルタントと共に採用計画の再検討を行うことができた。


▲スリランカ国籍の社員を交えた面談風景。
母国にいる家族も日本に迎え入れたいとの相談に対し、コンサルタントの井上さんがアドバイスを行った。

 
2.具体的取り組み
外国籍人材の活用に伴う基礎知識習得

 就業中の外国籍社員の処遇改善も含め、改めて外国籍社員の就労知識を学んだ。
「技能実習生・特定技能・高度人材(技人国ビザでの就労)」
の違いを理解できたことで、自社にマッチした活用領域はどこかを整理することができた。
 また、業務面だけでなく生活面でのサポートも重要であることが分かり、社内規程や就業規則改定のヒントも得られた。
外国籍人材の採用ルート選定から決定

 自社の特性に合った外国籍人材の活用方法を検討。中国の関連会社で働く外国籍社員の転籍も検討したが、現地の業務量過多もあり厳しく、「技能実習生」にて人材確保をしていく結論に至った。
ゴム製造業支援に明るい監理団体の紹介を受け、受け入れ開始に向けた打合せをスタートしたが、実習制度の法改正の可能性が浮上したため、今後の動向を見極めた上で慎重に事を進めていくこととした。 並行して、若手人材を採用するために、教育機関とのパイプ作りを開始。県内の留学生が多く在籍する大学等をピックアップし、アプローチのための営業活動を開始した。

採用計画、人事評価制度の内容検討
 人事評価制度については以前より社会保険労務士を交えて設計を進めており、外国籍社員の処遇内容も盛り込んでいく。
 社員の給与体系や採用計画について見直しを図るとともに、働きやすい環境整備に着手し、内部からの改善を図る。


取組成果と今後に向けて

1.短期的成果
◎支援計画の全体的な総括

 第1回目「現状の課題の洗い出し」
 第2回目「課題に対する短期的目標と中長期的目標の設定」
 第3回目「短期的目標の成果の有無」
 以上のテーマに対し、企業の真摯な取り組みによりすべての計画がほぼ予定通りに進捗し、課題を可視化することができた。
 一方で、課題分析及び課題解決への取り組みの中で、自助努力では解決できない要素(制度変更、求人応募者の適性など)があることも多数判明した。これにより中長期的目標の設定と対策の練り直しを行うことができた。
◎主要課題「多文化共生への取り組み」

 外国籍社員が勤務していたことにより、多文化共生への理解と社内共有が一定程度得られ、スムーズに今後の取り組み内容を固めることができた。外国籍人材の採用、育成が十分とは言えなかった部分も判明し、強化ポイントの整理も行った。
また、副次的な効果として、現在勤務するすべての社員に対しての職場環境改善、労働条件の明確化を推進できるようになり、「多文化共生」というD&Iの部分的な取り組みが、結果として職場全体の改善につながり、取り組みの大きな進歩となった。 

▲外国籍社員もスムーズに操作できるよう、機械にテプラを貼っている
 

2.今後の取組スケジュール
技能実習(育成就労)外国籍人材の確保
 紹介した監理団体(組合)と定期的に情報交換することにより、外国籍人材を確保する環境を継続的に維持していく。
 まずは、実習制度の法改正にアンテナを張っていくことが重要であり、改正内容によって今後の採用計画を調整していく。


短期的目標から中長期的目標へのシフト
 支援期間中に行った取り組み内容の継続実施が求められる。
いずれの取り組みも骨子が決まり行動を開始したばかりのため、継続的に行っていく必要がある。人材確保・社員の処遇改善と、会社内の環境整備を進めていく。

 

 ▲技能実習生の受入について協力いただいた監理団体のパンフレット


 

企業担当者からのメッセージ



製造部 部長
作田 幸久さん


 

❶コンサルティングを受ける前の思い
 製造現場の労働者確保について、求人による人員確保ができず、将来の生産体制の維持に不安を抱いておりました。外国籍社員の確保において何処に相談すべきか、模索している中でダイバーシティコンサルティング企業の募集を見て応募させていただきました。
❷コンサルティングによる変化
 専門知識を有する行政書士の方をコンサルタントとしてつけていただき、外国籍社員の募集や雇用時の注意点等、多方面のアドバイスをいただきました。また、監理団体のご紹介をいただいたことにより、会社訪問による教育風景、面接から採用までの手順を理解することができました。
❸全体的な感想
 2024年4月に技能実習制度の法改正のタイミングとなったこと(2024年1月時点での情報を基準)から、法改正後、特定技能実習制度においてゴム業界が対象業種となるのか確認の上、年度2名から3名程度の募集・求人を行っていく計画を立てております。


 

担当コンサルタントからのメッセージ

 今回のコンサルティングのテーマは、「多文化共生に対する取り組みを進めていきたい」というものでした。支援を進める中で、企業が抱える本質的な課題は「従業員の確保と育成」。その解決の方策の一つが外国籍人材の採用であり、外国籍人材の雇用実現のためにも「多文化共生」をテーマとして推進することで、国籍を問わず全ての社員が就労しやすい就業環境を整備し、人材の確保と育成を推進していこうとするものであると分析できました。
 一方で、すでに就業環境や社員の待遇改善が進んでいることも判明し、外国籍社員が働きやすい環境を整備していくことは、すべての社員のさらなる待遇改善にもつながることの気づきもありました。
 結論として、現在の就業環境の中で「多文化共生」を推進することは、社員の全般的な待遇改善に直結するものであり、推進しようとするD&Iがたとえ一部分であったとしても、社内全体の環境改善や多様性に対する認識と理解の向上につながるという、D&I推進の有意性を実感できるものとなりました。今後は、支援計画を基礎としてこれまで構築してきた独自の取り組みを推進し、中長期的目標を実現させることにより、社員の多様性に応じた、快適な就業環境をより一層整備していってほしいと思います。


行政書士事務所 ​ISAパートナーズ​
行政書士 井上 尉央さん

取り組み事例PDF版 《980KB》