事例報告 02

海老根建設株式会社
若手×ベテラン 誰もが活躍でき、評価される環境整備を目指す
設   立 1979年6月
本社所在地 茨城県久慈郡
大子町大子1835-2
代 表 者 代表取締役
柳瀬 香織
従 業 員 数 29名
▼ダイバーシティスコア 取り組み分野・分類
7.全体(1~6含む、人事制度、人材育成)

▼支援テーマ
ダイバーシティ全体への理解促進(シニア人材活用領域)

取り組み背景
 建設業という業種柄、働き方改革やダイバーシティに係る取り組みは行ってきたが、根本にある「理解促進」を置き去りにしていた。
 若手社員も徐々に増えてきている中、ベテラン社員からの技術・知識の継承ができる体制の整備・多様性の浸透を図る。
目指す姿
 ◆多様な人材を雇用し、世代間の連携や、技術・知識の継承がしっかりとできるような会社体制
 ◆ICT技術導入が業界内にも加速する中、世の中の変化にも柔軟に対応できる状態

短期的目標
 1)評価目標の策定
 2)育成担当社員の環境整備
 3)地元の高校卒業者を含めた、多様な人材の受け入れ

中長期的目標
 1)評価目標に対する社員の共通認識及び行動変容
 2)育成制度の整備、技術・知識の継承
 3)多様な人材の活躍

取組のあしあと
1.取り組み概要
課 題 ◆世代間の認識に差がある
◆評価制度が細かすぎる、浸透していない
◆上手く育成ができていない
◆組織が細かく分かれていて、連携が取れていない
◆若手の採用が不十分
取 組 ◆評価制度の見直し(OKR※の導入を提案)
◆社員の育成
◆ダイバーシティ採用
効 果 ◆事業部のOKRシートが完成。ブラッシュアップは必要だが、定性目標のための定量目標ができたことで、取組内容の見える化につながった。
◆育成分野が決まり、育成担当のペルソナが明確になったことである程度候補者の絞り込みができた。
◆求人サイト内の募集文言について、他社との差別化を図るためのアピールポイント取得方法を得られた。
※OKR Objectives and key results)は、組織や個人の目標設定のフレームワークのこと。
 


▲実際に作成したシート
 
2.具体的取り組み

評価制度の見直し
 1回目のコンサルティング内にて、コアとなる価値観を洗い出し、全体方針を決定。具体的な評価制度は、現在活用中の制度と照らし合わせつつ、育成担当も使いやすいように精度を上げ、整理を行った。
【OKRシートの活用】
 ・企業のOKR→現場/チームのOKR→個人のOKR、と順番に書き込むことで、個人の頑張りが会社のどこに貢献しているか可視化されるため、社員のモチベーションアップにつながる。
 ・細かい指標まで網羅しきれない部分は現行の評価指標を併用し、目標の達成(OKR)と、詳細部分の評価を分けて考える。
 ・OKRシートを用いて、会社が達成することから逆算し、従業員に求める行動についての整理実施。
(会社として達成したいこと:
 ①ICT化、②トレーニングセンターの稼働、③人材不足の解消) 

 ◆社員の育成
 一斉に育成を始めるのではなく、必要な分野を絞り、順を追って育成を始めていく。まずは、マニュアル化しやすいノウハウが溜まっている「技術職」分野への育成からスタートする事を決定した。
【育成担当者の選定】
 ・ベテラン社員からの信頼があり、テクノロジーを駆使し、かつ若い世代にも寄り添える20~30代社員で調整を図ることとなった。

 ◆ダイバーシティ採用
 コンサルティングを通して、ダイバーシティへの想いを整理した。現在掲載中の求人原稿を見ながら、内容をチェック。
 ・待遇面をアピールするのではなく、ダイバーシティ推進に対する想いなど、会社のスタンスに焦点を当てた、求人原稿の修正。
【ポイント】
 ・ChatGPTなどの生成AIツールを活用することによって、多様性や会社の風土をアピールする文言案を簡易に得ることもでき、掲載へのハードルも低く進めることができる。

取組成果と今後に向けて
 1.短期的成果
 大きく3つ設定をした短期的目標に対して、一番成果が大きかった項目は「評価制度の見直し」である。
業界の風土として、従業員同士・経営者と従業員間でのコミュニケーションが乏しくなりがちであり、企業理念や評価制度自体も社内で浸透していなかった。
 目標達成を目的とするのではなく、達成するために何をしたかを常に評価する仕組み作りを行い、必然的に皆が会話する機会へとつなげた。
 今後は、作った仕組みをいかに活用していけるかが重要となるため、会社の変革時期においては、経営層についても内部へ目を向ける努力が求められる。
 
社員の皆さん。国籍を問わず、幅広い年代の方々が働いています。
 
2.今後の取組スケジュール
 ◎評価制度の見直し
  ◆3回目のコンサルティングでのフィードバック内容の確認。
  ◆確定したOKRシートの内容から、個人に関わる部分を切り取って 加筆し、評価制度をアップデートする。
  ◆整備した評価制度に対し、社内で共通認識を持たせる。それにより評価されるべき行動が分かり、
         他チームとの連携向上や、技術・知識の継承、人材育成が円滑に進む。
  ◆定期的にOKRシートに基づいた運用管理を行っていく。
  ◆四半期に1回、進捗状況を確認するための1on1ミーティングを行う。
  (四半期毎が難しいようであれば、最低年2回は実施。)

 ◎社員の育成
  決定した育成担当者と、OKRシートで定めた目標を共有しながら従業員の育成を開始する。
   技術職分野が定着したら、次の育成分野検討→育成担当者検討→決定の流れで、ひとつひとつ進めていく。

 ◎ダイバーシティ採用
  ◆待遇の面ではなく、会社の想いにフォーカスした内容で、求人媒体に掲載する募集文を作成する。
  ◆求人媒体に掲載している文章をアップデートする。
  ◆常にサイトのアクセス数値などの効果分析を行っていく。
  ◆地元の高校生や多様な人材を雇用できるよう、アプローチを進める。

 
企業担当者からのメッセージ

代表取締役
柳瀬 香織 さん

 
❶コンサルティングを受ける前の思い
 以前より意識改革が遅れている認識はありましたが、どのように進めていけば従業員が受け入れ、社訓である「全進・善進・前進」していくことができるかが課題でした。 また、社内でのダイバーシティを推進していくことが、どのように経営に生きてくるのかも、理解が不足していた状態です。得られる効果についても懐疑的でした。
❷コンサルティングによる変化
 多様な人材をどのように同じ方向へ束ね、会社の掲げる目標に向かってもらうのか 、OKRシートを作成することにより、思考のベクトルを合わせられたうえ、明確化することができました。 また、従業員自ら具体的な数値目標を設定することで、コミュニケーションの場も増 え、より一層責任感を持って業務に取り組めるようになったと感じています。
❸全体的な感想
 性別や国籍、年齢などの違いだけが多様性ではなく、目に見えない知識や能力、価値観のように人の内面にかかわることもダイバーシティなのだと初めて認識でき、意識の ベクトルを合わせることもインクルージョンなのだと理解しました。 直ぐに成果が出るものではないからこそ、時間をかけて丁寧に取り組みを進めていきたいと思います。


 
担当コンサルタントからのメッセージ
 海老根建設様自身が達成したいことを明確にイメージされていて、コンサルティングに先立って施策案をいくつもご検討いただいていた印象でした。今回のコンサルティングを通して、その思いをさらに言語化し、共にブラッシュアップしていきました。
 コンサルティングを通して作り上げていった施策に具体的に取り組み、運用していただくために、社内の育成担当者を決めていただいたり、OKRシートに記載いただいたりなど、社内での取り組みもしっかりとご対応いただきました。その結果、大きな目標に対する詳細な目標や、達成に向けたアクション・評価まで、具体的に決定することができました。
 コンサルティングを通して、今後取り組むことが明確になったので、終了後にすぐに行動に移していただくことができるかと存じますが、定期的(四半期もしくは半期)に振り返りをしながら継続していくことが重要です。多忙な中ではありますが、うまく業務の中に取り入れつつ、継続的に取り組んでいただけると、経営的な目標も達成できるかと存じます。

株式会社JobRainbow
星 賢人 さん