事例集Ⅰ


<PDF版はこちら>事例集 関東道路株式会社《3.1MB》
 
 
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関東道路株式会社
関東道路
ダイバーシティ取組項目
人材育成
企業の成長には欠かせない人的資源を大切に
会社設立 1972年
本社所在地 茨城県筑西市下川島635
事業概要 舗装工事、土木工事、アスファルト合材の製造・販売、リサイクル業、太陽光パネルのプラットフォーム事業
資本金 2000万円
社員数 45人
HP https://www.kanto-doro.co.jp
 
 
取材登場人物
代表取締役
武藤 正浩 さん
執行役員 工事本部長
高﨑 芳治 さん
営業部 主任
工藤 茂剛 さん
営業部
武藤 理沙 さん
取組内容
◉人材育成
 人が成長することで企業も成長し結果を残すことができるという考えのもと、資格取得支援制度を確立することで誰もがキャリアアップできるような制度作り、ICT を用いた建設重機の講習を行っている。

社会人が学び直しをするリスキリングやリカレント教育を導入している。商工会議所や茨城県経営者協会が行っているマナー研修や外部研修を社員が就業時間内に受講できるようにするなど、人材育成に力を入れている。
 
 
  

1.取り組みを始めたきっかけと経緯

 
人材育成を行ったきっかけは何ですか?
武藤さん
人口減少が進んでいる中で、地域経済を存続させるためにも多様な人材を受け入れられる体制を整えていかなければならないのですが、特定技能実習生も少なく、人材確保が難しい中では、社内の人材育成がより大切になります。弊社には「人は石垣、人は城」という考えがあります。これは、資源の中で一番重要なものは人であり、社員が成長することで企業も成長することを表しています。


 

人材育成を行うようになって変化はありましたか?

武藤さん
人材育成を通して社員がレベルアップすることにより、物的資源を有効に利用することが可能になりました。その象徴として、弊社では2001年から、あらゆる製品やサービスに関して「世界中で同じ品質、同じレベルのものを提供できるようにしましょう」という国際的な基準であるISO規格取得への取り組みを開始しました。ISO9001(品質マネジメントシステム)・14001(環境マネジメントシステム)の同時認証を受けたのは県内企業で一番最初であり、生産性向上へとつなげています。

取り組みに対して意識していることは何ですか?

武藤さん
社員の資格取得に関して、本人のやる気も大切ですが、会社から資格取得を勧めてきっかけを作るようにしています。自分の仕事にあった資格を取得したい、スキルアップしていきたいという気持ちも大切にしていますし、社員を導き資格取得させることで、一つ上の仕事を担当できるようになり、会社に貢献しているという実感を感じることにもつなげてほしいと考えています。
人的資源についてお話をしてくださった武藤さん。
「人の成長は企業の成長」との言葉から、社員をいかに大切にしているかが伝わってきた。


 
2.取り組みに対しての現状・課題
 

取り組みに対しての効果は出ていますか?

武藤さん
社員の早期育成のためICT建機を導入したことで、普通は10年経験しなければ習得できない建設重機のオペレーションを、入社3年目で習得できるようにしました。土木工学を学んだことのない社員でも、仕事の中で操作を学べるようにしたのです。結果として教育費、育成費は3分の1に抑えることができました。また、弊社では資格取得支援制度が確立しているので、建設に関する資格の試験費用は会社が負担しています。
 

人材育成の他に行っていることを教えてください。

武藤さん
日本の人口は減少していて、将来同じ仕事量をこなすことは難しいと思います。そのため、多様な人材を受け入れることが企業の存続につながると考えています。令和3年の7月に「いばらきダイバーシティ宣言」を行い、多様な人材の受け入れを始めました。現在、ミャンマーから実習生が2名来ています。また、少ない人的資源の中で結果を出すことも大切にしています。

3.社員の声

 

実際にどのような資格を取得したのかを教えてください。

工藤さん
建設系の資格で道路などを平らに固めるための4tローラーの資格、2級建設機械施工管理技士、1級土木施工管理技士の資格を取得しました。また、資格取得だけではなく、最近では中間管理職の研修にも参加し、管理する側の勉強にも励んでいます。最近入社した社員は、アスファルト舗装を行うICTを使ったフィニッシャーという機械操作をはじめ、建築重機の講習、建設業と商工会議所が行っているマナー研修にも参加しています。月に1回程度は様々な分野の研修に参加し、学びを得ています。

高﨑さん
私は高校を卒業した後に入社し、20歳位で道路工事に必要なローラー系の免許、24歳頃に大型特殊免許を取得しました。初めは簡単な資格を取得し、徐々に難しい資格へチャレンジしていくことでレベルアップを図ってきました。できる仕事の幅が広がり、会社に貢献することができるようになりました。

 
現場作業について熱く語る工藤さん。

 
高﨑さんからは、入社当時の仕事内容や取得した資格等について親切に教えていただいた。
 

4.今後の展望

 

今後どのような取り組みを考えていますか?

武藤さん
今行っている人材育成を継続することと、人材育成の中でも、特にICTのスキル向上のための取り組みを行いたいです。同じ仕事を同じ能力で行っていると、今以上の生産性の向上は難しいです。生産性を向上させるためには、従業員一人一人のスキルアップ、レベルアップが必要になっていきます。業務に必要な資格はどんどんチャレンジする機会を与え、日本人だけでなく外国籍の社員にも資格取得にチャレンジしてもらいたいと思っています。ICTについては、建設業界でもICT技術を用いた重機が導入されています。作業効率のよい重機を導入しても、ICTの知識を持った人材がいないと動かすことはできません。仕事の効率化と企業の成長のためには、人をいかに育成できるかが鍵となります。



 

人材育成の他に継続していることはありますか?

武藤さん
東日本大震災が起きた年から、茨城県筑西市に対し毎年100万円を寄付しています。この取り組みは今年の茨城新聞にも掲載されました。1年で100万円は決して大きな金額とはいえませんが、それを20年続けると2000万円になります。何よりも開始したことを継続することが大切だと考えています。


 

会社の事業で今後力を入れていきたいとを教えてください。

武藤さん
太陽光パネルのリサイクル事業に力を入れていきたいと思います。太陽光パネルの処分は、国が一番懸念しており、災害に匹敵するような問題だと思います。その問題にいち早く取り組んで不法廃棄することなく、すべての部材をリサイクル、または最終処分を適正価格で受けられるようなプラットフォームを構築させたいと思います。また、来年から自社に太陽光パネルを設置します。太陽光パネルで作った電気を売るのではなく、自社で使う取り組みをしていきたいと思います。

 

5.取材の中で生まれた質問

 

同業他社と比較して、自社の強みを教えてください。

武藤さん
一番の強みは環境についての取り組みです。現在は、一般家庭から排出される可燃性のゴミを地域内で100%リサイクルできる地域循環型リサイクルシステムと、その製品(エコファルト)を開発し、環境改善活動に取り組んでいます。「地球環境の保全と改善を通して社会へ貢献する」という経営理念のもとで活動している弊社は、環境に対しての思いも強いです。私たちが作る製品を他の企業の皆さんにも使っていただくことで、自然と環境保全活動が広がっていけばよいと思っています。 
 

社長と社員の皆さんは、どのようにコミュニケーションを取っていますか?

武藤さん
新型コロナウイルスが感染拡大する前は、バーベキューや社員旅行などを行っていました。感染が落ち着いてきた今年は、社員の家族を招待し、東京ドームで野球観戦をしたり、スカイツリーや浅草を観光したりするなど、業務以外にも接する機会が多く取れました。他社に比べて社員とコミュニケーションを取る機会が多いと思います。最近だと筑西の花火大会を社員の家族の方と一緒に見ました。
 

今後どんな人材が必要となってきますか?

高﨑さん
仕事に関して積極的に質問する社員が入社してくると嬉しいですね。こちらから言われたことだけを淡々とこなすのではなく、作業が終了したら、「次はどうしますか?」「ここがわからないので教えてください」のように、何かしら質問してもらえると、相手が何を求めているのかが理解できるので、指導する側の人間も仕事がしやすいです。 

武藤さん
一番求めるている人材を一言で言うなら、愚直に汗を流せる人です。決して器用でなくてよいのです。例えば、ウサギとカメで言うとカメでいいんです。与えられた仕事を真面目に一生懸命行うことが大切です。また、チャレンジする人も好きです。行動を起こさないと結果は出ません。良いことは成功例として取り入れ、失敗したら取り入れるべきではないことを見つけたと考えればよいと思います。

 

 

小野 夏鈴
(大学3年生)
取材から文章にするまでのコツを学びたいと思い参加しました。この事業に参加する中で、普段話す機会が少ない立場の方や他大学の方と交流する機会があり楽しかったです。また、企業取材を通じて、働いていくうえでは、給与などはもちろんのこと、職場の雰囲気など働く環境もとても重要であることに気付きました。
学生リポーター
中山 翔汰
(短期大学2年生)
ゼミナールの先生の元にプロジェクトのチラシが届き、声をかけられたのがきっかけで参加しました。取材・執筆の経験がなかったので初めてのことだらけの中、研修でいろいろと学び、企業で取材を行い、記事を執筆することができました。今回の活動を通じて、分かりやすい文章を書くコツを身に付けることができました。

 
 
関東道路社長のコメント

弊社の最大の財産は人的資源であり、本インタビューの中でも“人は石垣、人は城”と申しました。国土交通省や経済産業省、環境省の表彰など、認定を得られたのも人材が全てで、人的資源が無くして企業成長は無く、人口減少が加速する中で多様化に対応するダイバーシティこそが基本になると考えています。プロフェッショナルを育成しながら多様な人材の育成を20年以上継続し、令和3年7月にダイバーシティ宣言を行い、この度、茨城県内でいち早く“リスキリング企業宣言”も行いました。社員が自分の5年後10年後そして20年後の姿や生活を想像でき、社員を支える家族と共に弊社及び仕事にやり甲斐と安定を感じられる企業を目指し、社員と共に歩み続けて行きたいと考えます。

代表取締役 武藤正浩


令和6年3月5日公開