学生が見る 県内企業のD&I 2024

 

 
会社設立 1939年
本社所在地 茨城県古河市鴻巣758
事業概要 自動車部品開発設計・製造、設備開発設計・製作・販売(非車載向け含む)
HP https://www.sanoh.com/
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■外国籍社員が働きやすい職場環境づくり 表記の工夫やお祈り部屋の設置など
 三桜工業は、19か国に83拠点を有するグローバル企業であり、日本国内でも、20か国以上の外国籍社員が働いています。日本国内の事業所で働く外国籍社員の割合は約10%であり、コーポレート部門(人事、営業、研究職等)、製造部門問わず、さまざまな部署で活躍しています。そのため、社内の表示も日本語と英語の2パターンで作成したり、社員が集まる食堂など2か所にお祈り部屋(※)を設置したりするなど、外国籍社員が働きやすい職場環境づくりをしています。外国籍社員を対象とした座談会も実施しており、外国籍社員からは、多様な人材がいることや、グローバルな環境に対し満足の声があがっています。一方で、英語の社内使用率をもっと高めてほしい、といった声もあり、座談会を通して課題を共有し、さらなる環境の改善につなげています。

(※)お祈り部屋:イスラム教など、礼拝が義務付けられている宗教を信仰している方が礼拝できる場所。

 
 
 
■社員の声を聞き、職場環境を改善 エンゲージメント調査、座談会、面談など
 三桜工業では、社員の声を聞き、職場環境の改善につなげる取り組みを多数行っています。
 年に2回、育児座談会を実施しています。座談会では、育児経験者の話を聞いたり、会社の制度を知ったり、育児中の社員同士の交流を深めたりしています。また、アンケートなど文面だけでは見えてこない課題を吸い上げることができ、施策の検討にもつながっています。実際に、育児時短勤務について、子どもが小学校に入学する前までが対象だったものを、小学校3年生の末までを対象とするように変更しました。育児休業復帰支援面談も実施しており、育休からの復帰がスムーズに行えるよう支援しています。また、男性の育休の取得メリットを伝えるなどの取り組みにより、三桜工業の男性の育休取得率は、2023年度は60%を超えており、日本の取得率の平均(2023年度は30%)及び政府目標(2025年までに50%)を上回っています。
 また、全員参加型の現場改善活動を行っています。職場での困りごとを、ネット上の専用フォームや郵便はがきで誰でも投稿できるようになっており、投稿された困りごとは、古河事業所の本部に届きます。困りごとは各事業部に展開され、改善計画を検討し、改善策を全社員で実行します。改善内容を全世界の事業所に共有し、会社全体の現場改善を行い、品質改善につなげています。(月次品質活動)
 さらに、社員に対するエンゲージメント調査(※)では、その結果をもとにエンゲージメント向上プロジェクトチームと各部門が対話をし、最終的には各部門が自ら様々な施策を展開することで、組織全体のエンゲージメントを高めていくことを目指しています。
 このように、社員の声を聞いて施策に反映させることで、社員が組織や仕事に主体的に取り組むことにつながります。社員全員が、職場環境改善への意識を持つことは、会社の風土が良くなることにもつながると考えています。

(※)エンゲージメント調査:従業員満足度とは異なり、従業員の所属組織に対する愛着心や仕事への情熱、従業員と組織の双方向の関係性や結びつきの度合いを指す。三桜工業では、ダイバーシティに関する設問も追加している。

 

石川 桃果さん
 
 三桜工業さんを訪れてみて、企業のキャッチフレーズに「多様性と自己変容が三桜のDNAです」と書かれている通り、実際にダイバーシティ推進に取り組んでいる姿や、企業側の柔軟な姿勢を直接見学することができました。
 今回、オフィス内や工場内を拝見させてもらった中で、様々な場所で日本語と英語の両言語の表記があるなど、多文化共生の環境への意識が高いことを実感しました。そして、外国人の新入社員さん2人と昼食を取った際に、周りの人々が本当に親切であることを話されていて、さらにおふたりのリラックスした雰囲気を見て、国籍関係なく誰でも安心して働ける環境が整っているのだな、と感じました。さらに、担当してくださった方々が、学生である私の意見でさえ真剣にメモを取って、企業の今後に活かそうとしてくれる柔軟な姿勢を持っているところに魅了されました。このことから、立場関係なく、取り入れられるところはしっかりと吸収し、最善を目指そうとする考えを、自分自身にも取り入れて今後の生活に活かしていきたいと思いました。

佐藤 和花さん
 
 今回、三桜工業株式会社さんの見学・取材を通して、多国籍企業だからこそのダイバーシティに関する取り組みを知ることができました。多国籍企業は、言語、文化、多様性への意識の違いが障壁になりうる可能性がありますが、20以上の国籍の人材を活用し、19か国に拠点を持つ企業だからこそ、その特性を逆に利用して、それぞれ人、国に合わせた取り組みが行われており、多様性理解が会社や社会にもたらす利益を理解するとともに、その重要性を再確認することができました。
 特に印象的だったのは、ダイバーシティやエンゲージメントに対する取り組みは、継続することが最も重要であるということです。新しい取り組みを始めるだけではなく、参加してもらうためにどういった工夫ができるか、また、良い結果をもたらすために、どのように継続していくかといった視点が、とても重要であるとおっしゃっていました。三桜工業株式会社さんの、視野を広げて、新しい取り組みを始めていく姿勢が目を引きますが、すぐに結果を求めるだけでなく、意識から変化させていくためには、どう改善して、継続させていくかといったポイントについて考えることも重要であることを強く感じました。

 

出頭 あかりさん
 取材で最も印象に残ったのは、外国人労働者と協働する上での工夫について質問した際の「当たり前になりすぎていてあまり思いつかない」という返答でした。私は、DE&Iの推進のために一番必要なのは、相手との違いを良い意味でも悪い意味でも特別視しないことだと考えています。この返答から、三桜工業さんでは、異文化の共存や多様性の受け入れがすでに日常の一部として根付いていることがうかがえました。地元である茨城県に拠点を置く大きな企業でこのような先進的な環境が築かれているのはとても誇らしいことだと感じました。
 一方で、当事者からは「配慮が十分でない」とする声も上がっているということも興味深かったです。マジョリティ側が十分だと思っている配慮でも、マイノリティの立場に立ってみると不便さが残るという点は他の全ての問題にも通じる教訓であると思います。私も、日常において自分と違う境遇の人と接する際、特別視しすぎずにその人自身を見るということを大切にしたうえで、差別と必要な区別とをはき違えず、必要な配慮を相手の立場に立って行うということも忘れないようにしたいと思いました。