事例集 Ⅲ


<PDF版はこちら>事例集 関彰商事株式会社(関彰グループ)《22.9MB》
 
 
関彰商事株式会社
関彰商事
株式会社
地域貢献を軸とした、ダイバーシティ経営戦略
会 社 創 業 1908年2月6日(設立:1938年1月)
本社所在地 つくば本社 〒305-0051 茨城県つくば市二の宮1-23-6
事 業 概 要 総合商社
資 本 金 9000万円
社 員 数 セキショウグループ計 2350人(2021年2月現在)
H    P https://www.sekisho.co.jp/

 
 
取材登場人物


代表取締役社長
関 正樹 さん
 
モビリティ総合企画部 
モビリティ企画課 課長
デピノ ルドヴィク さん
ヒューマンケア部 
ウェルビーイング課
魚里 勇介 さん
総合企画部
総合企画課
タニ ジェイミー アズサ さん
経理部経理課
熊谷 菜美 さん
デジタルトランスフォーメーション部
デジタルトランスフォーメーション1課
ファン バオ ソン さん
総合企画部
事業開発課
菊地 凜 さん

 
取り組み内容
人材育成(環境整備)

人間にとって、生涯「学び」は重要であるという考えのもと、従業員に対し「リカレント教育」を提供している。県内外の大学と連携し、従業員自らが希望する講座を選択できるよう、多彩な講座ラインナップを用意。学びを個人の財産とし、業務へ還元することで組織力向上へとつなげている。

多様な人材受け入れ

ベトナムでの現地法人立ち上げと共に、外国籍社員の採用が活発となった。変化の激しい経済環境においては、多様な人材が交流し意見を出し合うことが今後の企業成長の要素と考えており、世界各国の人材を積極的に採用している。
アスリート社員は世界大会や全国大会での活躍を目標にし、日々業務をこなしながら競技に打ち込んでおり、多様な価値観や経験を持つアスリート社員と共に働くことは、新たな価値観の創出になると考えている。

 
 
取り組みを始めた経緯や現状
 
クエスチョン外国籍社員やアスリート社員など多様な人材受け入れを始めた経緯について
   教えてください。

関さん
2014年にベトナムを訪問した際、日本とは違った若者の活気や次世代に向けて動き出している様子を感じたのがきっかけで外国籍社員の採用を始めました。その後、茨城大学や筑波大学で行っていた就職セミナーの延長として、特にベトナム人学生の採用に力を入れ始め、今では世界各地から魅力的な方が入社してくれています。アスリート社員の採用に関しては筑波大学の持つ知見や技術を社内に取り入れ、大学とよりよい関係を築きたいという思いから始めました。


クエスチョンリカレント教育や女性社員向けの制度など人材育成に関する現状を教えてください。
関さん
2018年に当時の茨城大学 学長から新たな教育プログラムを始めたいというお話をいただいたのがきっかけで、社会人が教育機関で学び直しができるリカレント教育制度を取り入れ始めました。当時の私は関彰商事が「法人」として学ぶ場が欲しいという思いを抱いていたため、双方の思いが合致した形で我が社のリカレント教育制度が始まりました。女性社員に対する取り組みは、主にヒューマンケア部(※)が私の考えをくみ取りながら進めてくれました。女性の育休制度はかなり浸透してはいるものの、育休制度を利用する女性側の考えも多様化してきており、それぞれの希望に応じた体制を整えるのが今後の課題です。
(※)ヒューマンケア部:人事部のこと(2018年に組織名を変更)


クエスチョン関さんが考える「学び」について教えてください。
関さん
私が思う「学び」とは、自分自身を知り、自分に足りない部分を自覚することで、さらに勉強しようとする姿勢だと思います。学び続けることで知識やできることが増え、世界が広がり、新たな発想が生まれます。また、自分に真剣な悩みを打ち明けてくれる身近な人に対してきちんとした返答をするためにも、やはり学び続ける必要があると思います。
 
茨城大学や茨城キリスト教大学で行っているリカレント教育の授業風景

「脱皮を行う生物は、一度脱皮をすると過去の記憶が崩壊してしまうため、先天的な記憶や能力で生きているのに対し、
人間は学び続けることで後天的に成長することができるのです」
こうしたエピソードを交えながら学び続けることの意義について語られた関さん。

 
 
今度の展望
 
クエスチョン多様な人材受け入れに関する今後の展望を聞かせてください。
関さん
私は会社選びに悩む全ての人に対して、自分の価値観と合致した会社を選んでほしいと思っており、同じ方向を向いている方々を集め、その方々の考えを結び付けることが私の役割です。外国籍社員に関しては、雇用することが目的となっている面があるため、彼らに何をしてほしいのか、一緒にどのような世界を目指していくのかを明確にしていかなければなりません。障害のある方やLGBTQの方を含む多様な方を採用することで数多くの個性が各社員の脳内に点として記憶されます。私はその溢れかえる点同士を結び付けて線にすることが、多様な人材受け入れにおいて大切だと考えています。


クエスチョン人材育成に関する今後の展望を聞かせてください。
関さん
今後は自分の強みを生かして地域貢献や人の役に立とうとする気持ちを持った人材を育てていきたいなと思っています。私は、社員が成長できる環境を作ることはできると考えているため、その一環としてリカレント教育は今後も継続したいと考えています。また、多様な方と一緒に働き、徐々にその方々の良さや違いを理解していく中で多くの社員は多様な視点で物事を考えられるようになります。こうした経験は社員自身の大きな成長につながるため、多様な人材受け入れと社員の育成には大きな関係性があると私は考えています。
 

「私の考える“ダイバーシティ”とは隣の人を大切にすることであり、個性を尊重することは決して特別なことではないのです」
と多様な人材受け入れに対する考えを語られた関さん。

 
 
 
外国籍社員の声

 
クエスチョン関彰商事に入社した理由は何ですか?
ジェイミーさん
コミュニティに非常に根付いた会社であり、自分の個性を出しやすい雰囲気に魅力を感じ入社しました。私は当時筑波大学の大学院に留学しており、日本で就職したいと思っていましたが、自分の力を発揮できるのか不安に思っていました。当社は、学内にセキショウフィールド(※)を寄贈しており、そのフィールドでスポーツ関係の交流会が盛んに行われています。そんな一面からも、「関彰商事は地域に根付いた会社」というイメージを持つようになり、自分が探し求めていた場所はここなのだと思えたことが、応募のきっかけになりました。
(※)セキショウフィールド:関彰商事が筑波大学に寄贈している人工芝のグラウンドのこと。

ソンさん
私は、ベトナムで開催されたSEKISHO JOB FAIRに参加したことがきっかけで、入社しました。大学卒業後はベトナムで就職をしたのですが、日本で働きたいという夢を諦められず、1年間日本語を勉強しました。その後SEKISHO JOB FAIRに参加し、関彰商事は100年以上続く地域に根付いた企業だということ、そして、同じベトナム国籍の方が活躍しているといったお話しをうかがい、入社を希望しました。入社当初は、生活面での不安もありましたが、上司や先輩方から手厚いサポートを受け、安心して仕事に集中できる環境をつくっていただき、とても感謝しています。
 

「SEKISHO JOB FAIR」
イベント開催時の様子


クエスチョン日本と自国の文化の違いで苦労したことはありますか?
ルドヴィクさん
生活で困っていることはありませんが、仕事上で苦労していることを挙げるとしたら、コミュニケーションの問題です。例えば、冗談として話して日本人は当たり前だと思っていることが、私にとっては時々当たり前ではなく違う感覚を持つときがあるので、うまくいかないことがあります。また、日本では相手を傷つけないよう物事をはっきりと言わないため、小さなずれが生じることがあり、文化の違いを実感しました。
 
ジェイミーさん
私はいわゆる報連相(報告・連絡・相談)が苦手でした。特に報告と連絡です。アメリカでは、自分が責任を持って行動するのが当たり前なので、特に大きな問題や出来事がなければ、上司に報告する必要もありません。しかし、日本では上司が部下の責任を負うため、部下が外出する際には報告や連絡が重要です。そのため、入社当初はかなり抵抗がありました。


クエスチョン日本企業で働きたいと考えている外国籍の方々へメッセージはありますか?
ジェイミーさん
就職活動においては自分の持つコミュニケーションスタイルや考え方が、希望する会社の風土とマッチしているかどうかを大切にしてほしいです。私は現在海外の新規事業の開発に携わっており、キャリアのイベントでインドの学生と交流する機会がありました。そこで自分のスキルが日本で通用するかどうか不安に感じているインド人学生が多かったことが印象的でした。私は日本での就職において個人のスキルに関するハードな壁はあまりないと思います。自分のスキルに自信を持ち、日本の企業文化や風土、労働状況などの内面的な実態について調べてみてほしいです。


(写真左から)ファン バオ ソンさん、タニ ジェイミー アズサさん、デピノ ルドヴィクさん。
3人とも関彰商事に入社した背景は違うものの、自分のスキルを高めていきたいという思いは共通しており、
日本でのワークライフを楽しんでいる様子がうかがえた。

 
 
アスリート社員の声

 
クエスチョン関彰商事に入社した理由は何ですか?
魚里さん
鹿島アントラーズのスポンサードやマラソン大会への協賛など、スポーツ支援に力を入れていることがきっかけです。当社は地域貢献に力を入れているため、競技で結果を残して喜んでもらいたいという自分の思いと似ていたこともきっかけの一つです。

熊谷さん
私は、競技の練習時間を確保できることと、正社員として雇用していただけることの2つの制度に魅力を感じ入社しました。一般的に社会人で競技を続けているアスリートは、契約社員として採用されている方も多い中、不安を感じることなく競技に専念できる点に魅力を感じています。

菊地さん
私は茨城県代表として、弓道の全国大会等に何度も出場しており、茨城県から多岐にわたってご支援をいただきました。そのため、茨城県に恩返しをしたいという思いから、「地域に育てられ、地域にご奉仕する」という理念を掲げている当社に魅力を感じ、入社しました。


クエスチョン競技経験が今の業務に生きていると思うことは何ですか?
魚里さん
競技をする中で身に付いた身体や精神面のケアです。例えば疲労回復に効果的なストレッチや、就寝・起床にベストな時間が分かっていること。その他、新卒の採用担当者に必要なプレゼンを成功させるためのパフォーマンスなど、業務に限らず普段の生活でも重要な能力が身に付いたと感じています。

(写真左から)菊地さん、熊谷さん、魚里さん。
チームワーク力やより良いものを求める力など、アスリートを経験しているからこそ仕事に生かせる強みがあるとお話しされていた。


 
クエスチョン多様な人材の活躍を広げるために、会社側に求める制度や要望はありますか?
3人のご意見
仕事の合間に一息つくことができる休憩スペースや、心身の悩みや栄養管理の相談ができる保健室があればいいなと感じています。特に、女性ならではの悩みをお持ちの方もいらっしゃると思うので、気軽に相談できる場があると嬉しいです。休憩スペースに関しては、アスリートに限らず日々の疲れはあると思うので、休めるスペースが欲しいなと感じています。休憩スペースや保健室があれば、心身のバランスを保ちながら業務ができるため、安心して仕事に取り組めると思います。
 
アスリート社員の方々は、仕事と競技の両立を実現しています。
 
魚里さん 菊地さん 熊谷さん
競技種目:短距離走 競技種目:弓道 競技種目:競歩
 
 
取材の中で生まれた質問

 
クエスチョンリカレント教育を受けていますか。あるいは受けてみたいですか?
ルドヴィクさん
現在は事業構想学院大学で新事業を創るためのスキルを学んでいます。数年前には武蔵野大学データサイエンス学部でプログラミングやAIに関する授業を受けた経験もあります。

ジェイミーさん
東北大学で行われたスマート・エイジング・カレッジプログラムに参加し、高齢社会の現状やシニアビジネスに関して学んだ経験があります。茨城大学で統計学の授業を受けた経験もあります。

魚里さん
アスリート社員が通常業務と競技の両立を行いつつ、リカレント教育を受けるのは現実的には厳しい面があります。ですが、個人的には外国籍の方と交流する機会もあるため英語を学びたいという気持ちはあります。
 

現在も業務上のスキルアップのためにリカレント教育を受けているルドヴィクさんとジェイミーさん。
これまでのリカレント教育に関する自身の経験談や、その魅力について語られていた。

 

 
取材風景
関彰商事さんへの取材は2日間に分けて実施しました。
1日目は外国籍社員3人とアスリート社員3人の計6人に対して約2時間の取材をさせていただきました。外国籍社員の方は、入社したきっかけや関彰商事の魅力などを話されており、アスリート社員の方は仕事と競技の両立を支援してくださる会社の体制に、非常に満足している様子でした。
2日目は関さんに対して約1時間半の取材をさせていただきました。関彰商事の社員の方も同席され、適度な緊張感の下で取材が行われました。インタビュアーと関さん以外の同席者も会話に参加したり時折笑顔が見受けられたりなど、大変良い雰囲気で取材を行うことができました。
社長室で行われた関さんへの取材は、複数の社員の方も同席したため適度な緊張感の下で行われた。 アスリート・外国籍社員への取材では、和やかな雰囲気で、関彰商事への思いや趣味についても笑顔でお話しいただいた。
 


 
取材を終えて


学生リポーター
中井遥

 
関さんをはじめ、外国籍社員やアスリート社員の方々への取材を通して、自分自身の働き方やダイバーシティに対する視野が広がりました。関さんへの取材では、多様な人材受け入れに対するお考えや、子育てをしながら働く社員のための制度の構想をお聞きし、自分にはなかった視点でダイバーシティについて学ぶことができました。また、社員の方々への取材では、海外にある副業や長期休暇制度、競技で培った能力を生かす働き方を知ることができました。


学生リポーター
阿部浩将
 
関さんへのインタビューを通じては、ダイバーシティ経営に対する関さんの思いに加えて経営者としての信念に関するお話もしていただいたため、多くの学びを得ることができました。社員さんへのインタビューを通じては、関彰商事さんのダイバーシティ関連の取り組みに対して非常に満足している様子が終始見受けられたのがとても印象的でした。今回の自分たちの啓発活動が少しでもダイバーシティ推進企業の増加につながってほしいですし、今後も主体的にダイバーシティに関する知見を深めていきたいと感じました。そして実際の現場で働く方々からお話を聞くことで、自分自身の今後のキャリア選択において参考となる学びも多々あり、改めてこのダイバーシティ推進・啓発事業に携わることができて大変光栄でした。


 
企業側からのコメント 当社では、各個人が心理的・身体的・社会的に充実した状態である「ウェルビーイング」の向上に取り組んでいます。今後もダイバーシティ経営を通じて、性別や国籍に関わらず、お互いに認め合い活躍できる職場環境をつくりあげると共に、セキショウに関わる全ての人の「人生が豊か」になるよう、ウェルビーイングカンパニーとして成長し続けていきたいと考えています。
ヒューマンケア部 高橋塁  

令和5年2月22日公開