事例集 Ⅱ


<PDF版はこちら>事例集 株式会社シンプルウェイ《16.1MB》
 
 

株式会社
シンプルウェイ
従業員ファーストを追求した新たな企業の形
会 社 設 立 2007年
本社所在地 茨城県つくば市松代1-4-20
事 業 概 要 ウェブシステム開発・保守、
スマートフォンアプリケーション開発・保守、
ウェブサイト制作・保守
資 本 金 1000万円
社 員 数 24人
H    P https://www.simple-way.co.jp/

 
 
取材登場人物

代表取締役
大野 裕介 さん

取締役・弁護士
川久保 皆実 さん

取り組み内容
労働環境整備

・完全在宅勤務
全社員に対して在宅勤務を導入し、自宅から業務を行えるようにした。「Log+(ログタス)」という勤怠・業務管理を行えるシンプルウェイ独自で開発したシステムを用いることによって、社員一人一人の作業を共有し、効率よく仕事ができるよう全ての業務を見える化した。

・フレックスタイム制度
フレックスタイム制を導入しており、コアタイムである9時から11時の間に働けば、残りの時間は5時から22時の間であればどの時間帯に働いてもよく、中抜けも自由である。また、1日に何時間働くかも、1カ月間の総労働時間の枠内で自由に決めることができるため、社員それぞれのライフスタイルに合った働き方ができる。
 

 
取り組みを始めたきっかけと経緯
 
クエスチョン完全在宅勤務を導入した経緯は何ですか?
大野さん
完全在宅勤務を開始したのは2020年の9月からになります。一番大きな要因はコロナ禍ですね。社内や通勤中での感染を防ぐために導入しました。完全在宅勤務を開始する前から、役員や子育て中のスタッフを中心に在宅勤務を始めていたので、会社全体での在宅勤務も何の問題も無くスムーズに実施できました。


クエスチョンシンプルウェイが行っている働き方改革について教えてください。
川久保さん
完全在宅勤務とフレックスタイム勤務制度、時間外労働の削減、年次有給休暇消化の奨励ですね。また、育児、介護、不妊治療などの事情があるスタッフについては会社に申請をしていただくと「ワークライフバランス勤務制度」が適用されます。これはフレックスタイム制のコアタイムの縛りが完全に無くなった制度で、5時から22時の間、好きな時間に勤務できるようになります。また、一般的に断れない残業も拒否できる権利が付与されます。男性の長期育休も奨励しており、実際に2人の男性スタッフが、2カ月から3カ月間の育休を取得しました。実際に制度を利用しているスタッフは、自分の生活と仕事をパズルのように組み合わせる形で柔軟な働き方を可能にしています。このような働き方ができるのも、通勤する必要が無い完全在宅勤務とフレックスタイム制を併用しているからだと思います。


クエスチョン全ての業務を見える化した理由やきっかけはありますか?
川久保さん
社員が時間当たりどのようなパフォーマンスをしたか、客観的なデータを見て評価できるようにしたかったからです。例えば従来型の企業では、定時に仕事を終わらせるために必死に働いている1時間当たりの労働生産性が非常に高い社員と比べて、長い時間、夜遅くまでだらだら残業した社員の方が高く評価されてしまうようなことが起こりがちです。弊社ではそのようなことが起こらないように、業務管理システムのデータを用いて、労働時間ではなく労働生産性をもとに社員の評価を行うよう心がけています。
 
在宅勤務の様子。
各部署、社内全体のミーティングや代表との一対一のミーティングも行っている。

 
 
取り組みに対しての現状・課題

 
クエスチョン完全在宅勤務をしていく中で課題はありますか?
大野さん
コミュニケーション不足ですね。オフィスで働く時と違って雑談が無くなったり、仕事で少し相談したりすることが在宅勤務では難しいので、弊社ではオンライン上のツールを使ってすぐに会話できる環境を用意しています。また、毎朝5分間の朝会を行ったり、毎月オンラインアンケートを実施して各スタッフの意見を吸い上げたうえで、全スタッフと一対一のミーティングを行ったりしています。基本的にはオンラインですが年に何回かリアルでコミュニケーションをとる機会を意識してつくるようにしています。


クエスチョン社員に対して手厚いサポート面を整備する中で、経営的な悩みはありますか?
大野さん
人材不足ですね。休みに対してとても柔軟な制度にしているので、役員間で「どういうふうに休み中の業務調整をする?」といった話はよくします。なぜ、弊社が人に合わせた働き方を可能にする制度を充実させているのかというと、人材獲得の場面で他社との違いをつくるためです。育児や介護などの制約で、フルタイムは無理だなと思ってる方でも、うちの会社でなら正社員として働けるという人を採用できたらいいなと思っています。そこで、人材獲得という経営の悩みを解決するために、働きやすくなるであろう各種制度を充実させて採用力を上げたり、反対に離職率を下げたりしていますね。また、最近はIT企業の人件費が高騰しています。弊社もこの2年で総額の給与でいうと2割から3割程度上がっています。人件費が上がったとしても、それで良い人材が集まったり社員のやる気につながったりして、好循環を生み出せればいいなと思っています。

 
毎朝5分間、決めたテーマに沿って1日1人ずつ話す朝会は
スタッフとのコミュニケーションのために欠かせない。

 
 
社員の声

 
クエスチョン仕事を完全在宅勤務に切り替えたときの社員の反応は?
大野さん
社員は皆、「やったー!」という感じでしたね。やはり、通勤するのはしんどいと思いますし。以前は、自転車で通勤している社員もいれば、石岡や筑西からつくばまで自動車で1時間ぐらいかけて通勤している社員もいました。加えて、自宅を出るまでの身だしなみなどの準備時間を含めると1日2時間から3時間ほど業務以外の時間が取られてしまうので、通勤時間や準備時間が無くなることに対してネガティブな反応は無かったと思います。

川久保さん
オフィスで仕事をしたいスタッフは出社してもよいルールにしているのですが、誰も出社していないので、皆、家で仕事をやった方が楽なのだなと思いました。また、完全在宅勤務に移行したことによって、スタッフ間の病気の感染リスクが完全に無くなり、働く部屋の温度調整等も各自が自由にできるようになりました。これは全てのスタッフにとってメリットとなりますが、特に体調管理が重要となる妊娠中や不妊治療中のスタッフに安心して働いていただけていると感じています。


クエスチョン残業時間を少なくしたときの社員の反応は?
大野さん
これは、ある意味、社風かもしれませんが、私たちの職場ではプライベートを重視したいというスタッフが多いので、残業を減らすということに対してのネガティブな反応はあまり無かったと思います。お子さんがいるスタッフもいて、残業が減った分を子供と接する時間に充てたり自分の趣味に充てたりすることができるからだと思います。
 

当日はオンラインでの取材だったが身振り手振りを交えて丁寧にお話ししていただき、
終始和やかな空気で取材を進めることができた。

 
 
 
今後の展望

 
クエスチョン在宅勤務やフレックスタイム制度の他に、導入してみたい制度はありますか?
大野さん
仕事をする中でスタッフの満足度やモチベーションを上げるにはどうしたらよいか、日々考えています。今、導入してみようかなと思っているのが、スタッフ一人一人に記念日を設定してもらって、その記念日を有給休暇にするというものです。設定する記念日は自由に決めてもらいます。この制度を導入することによって、例えば恋人や家族がいる社員は、「そういう会社で働いているんだ、いいね」と言われ、自分の仕事を認めてもらえるきっかけになります。職場の制度を使うことで、社員が属するコミュニティにとって良い影響をもたらすような制度を作ってみたいです。


クエスチョン事務系人材など幅広い職種の採用を行う予定はありますか?
大野さん
事務系の人材を専門で採用するというのは今のところ考えていません。経理、総務、人事といったバックオフィスの業務はシステム化をして効率化しているためです。ただ、未経験でエンジニアになりたい、という人を募集するということは行っています。これは、文系・理系に関係なく、やる気がある人は伸びるので。未経験だけれどトライアルしてみるというポテンシャル採用のような募集形態を取り入れてみるのも面白いかなと思っています。
 

シンプルウェイの採用サイトには「Work+Life Fit」というキャッチコピーが。
スタッフ一人ひとりが理想の暮らしにフィットした働き方ができる会社にしたいという想いが込められている。
 
 
取材の中で生まれた質問
 
クエスチョン未経験者の採用人数は何人ですか?また、年齢での採用基準は設けていますか?
大野さん
未経験で採用した人数は多くはないです。現時点で在籍しているスタッフ(24人)でいうと1、2人程です。また、年齢での採用基準は設けていません。しかし、その年齢に応じたスキルが備わっているかどうかは重要視しています。


クエスチョン社内の雰囲気はどのような感じですか?
大野さん
雰囲気は、どちらかというと皆マイペースで落ち着いています。穏やかなスタッフが非常に多いので、全体的な雰囲気として体育会系のようなガツガツした感じではなく、和やかな感じですね。
 

コロナが流行してからなかなか皆で集まる機会がつくれなかったが、2022年は忘年会を行うことができたそう。
社員同士の仲の良さがうかがえる。

 

 
取材風景
シンプルウェイさんへの取材は、完全在宅勤務ということもあり、取材もオンラインで実施しました。取材には、代表の大野さんと取締役の川久保さんにご対応いただき、テレワークを導入したきっかけやオンライン上での業務における問題点・課題など、たくさんの貴重なお話を聴くことができました。今回、D&I事業のメインテーマである「ダイバーシティに関する取り組み」を取材する中で、シンプルウェイさんが社員さんにとって働きやすい労働環境をつくっていることが分かりました。労働環境の整備として取り組んでいらっしゃる項目として、フレックスタイム制度や完全在宅勤務があり、不妊治療中の方や子育てで忙しいお父さん・お母さんが柔軟に働けるような労働形態になっていました。さらに、在宅で仕事ができるため、コアタイムを除けばどの時間に働いてもよいというところが、非常に働きやすいポイントだと感じました。
 

大野さんはたびたび、社員さんのことを話す際に自然と口角があがって笑顔になった。
社員さん思いの熱心な方だなと感じた。
オンラインでの取材ということもあり、初めは緊張したが取材が進むにつれて緊張もほぐれ、会話も盛り上がった。


 
取材を終えて

学生リポーター 泉さん
学生リポーター
泉 有紀

 
大野さんと川久保さんへの取材を通じて、社員のモチベーションを維持するための工夫がされており、子どもがいる社員や不妊治療をしている社員へのフォローが手厚いため、シンプルウェイさんはとても社員思いの会社だと感じました。取材をしていく中で、「私もこの会社に入社したい!」と思えるほど、とても魅力的な企業でした。また、本活動のテーマでもある「ダイバーシティ&インクルージョン」の観点では、それぞれ異なるコミュニティに属する人がフレックスタイム制度や在宅勤務を活用することによって、いつでもどこでも仕事をすることができるという点で、本テーマを網羅している企業だと感じました。

学生リポーター 松岡さん
学生リポーター
松岡 慶祐
 
取材前は、在宅勤務だと仕事がしにくい面があるのではと思っていましたが、シンプルウェイさんはICTツールを利用するなど様々な対策を講じて、社員が安心して働くことができる環境を整えていました。特に業務管理システムを用いて社員の評価を正確に行うことや、不足しがちになる社員同士のコミュニケーションを取る機会を意識して設けている点が強く印象に残りました。
働きやすさを追求した経営者の思いから、完全在宅勤務やフレックスタイム勤務制度を導入し、労働環境を整えていったことで、社員にとってのメリットが増えて好循環を生んでいると感じました。


 
企業側からのコメント 「一人一人のスタッフが、安心して自分らしく働ける会社をつくりたい。」そのような思いで、約10年間をかけて、スタッフが働きやすい環境を少しずつ整備してまいりました。今でこそ、ダイバーシティ推進・啓発事業モデル企業に採択いただけるような体制となりましたが、整備を始めた当初は労働基準法を守るだけでも精一杯の状況でした。ダイバーシティ推進は一朝一夕に実現できるものではなく、スタッフ一人一人のニーズに真摯に向き合いながら、会社がそのニーズに寄り添って少しずつ変化していくことが重要であると考えています。今回、泉さんと松岡さんに取材をしていただいたことで、改めて初心を振り返ることができました。これからも、多様なスタッフが、それぞれの生き方にフィットした働き方ができるよう、労働環境を柔軟に改善し続けてまいります。
代表取締役 大野裕介、取締役・弁護士 川久保皆実  

令和5年2月22日公開