1.取り組みを始めたきっかけと経緯
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外国籍人材の採用を始めたきっかけと経緯を教えてください。 |
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阿部さん
1990年頃、数名の日系ブラジル人の方が弊社工場の作業者という形で働いていました。その頃は、多くの日系ブラジル人の方が日本に戻り、仕事を探している時期で、弊社としては多国籍、多文化にしようという意図はありませんでした。外国籍社員の採用が増えたのは2008年頃です。技能実習制度が始まった時にベトナム人の方を技能実習生として受け入れ始めました。その後、2011年に弊社がベトナムに進出をしたことも大きく関係しています。製造業の人材不足が懸念されたタイミングと、海外の方と一緒に働きたいと思い始めたタイミングが重なり、外国籍人材を採用する機会が増えました。 |
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どういった方法で採用していますか?
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阿部さん
直接採用したり、技能実習生として採用したりしています。技能実習制度が始まった頃は、技能実習生を紹介する組織に人材を紹介してもらっていましたが、2016年には弊社独自で紹介組織も作りました。また、実習期間が終わっても長く働きたい方には、特定技能制度に切り替えて継続就業してもらっています。それだけでなく、ベトナム工場に勤めていて日本に興味のある方には、日本の工場に転籍してもらっています。現地の大学生の直接雇用もしています。 |
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外国籍社員の方はどのようなフィールドで活躍していますか?
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阿部さん
工場で作業者として働いている方もいますし、エンジニアとして働いている方もいます。技術や能力があれば国籍や出身に関係なく登用しています。 |
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生活面でサポートしていることはありますか?
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阿部さん
来日前に弊社で支援し、母国で自動車運転免許を取得してもらっています。というのも、来日後に、新しい環境や仕事に慣れる中、免許を取得してもらうのは、外国籍社員の大きな負担になってしまうからです。また住宅手当を整備したり、社内に日用品の購入ができる無人店舗を導入したりしています。 |
外国籍社員の受け入れについてお話をして下さった阿部さん。
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2.取り組みに対しての現状・課題 |
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多文化理解に努めていることはありますか?
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阿部さん
私自身が、会社のベトナム進出時に、言葉の壁や文化の違いを痛感しました。ですので、積極的に多文化の体験をするように努めています。宗教に関しては、イスラム教は日本では馴染みが薄いので、弊社で働いているイスラム教徒の方にモスクへ連れていってもらいました。私自身、外国籍の方を特別意識して採用しているわけではありません。技術を持っている方が、たまたま外国籍の方で、日本人と文化や宗教が違うだけという認識で採用しています。 |
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お祈りの方角を確認している様子。このようにタブレットの機能を使って調べるのだそう。
オフィスに敷設されたお祈り部屋。
仕切りで囲むことで、他の社員を気にすることなくお祈りができるようにしている。
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言語の壁はどのように乗り越えましたか?
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阿部さん
外国籍社員の方には、まず日本語を覚えてもらうように伝えています。いざ作業に入って指示や説明をすると、日本語では伝わりきらない部分が出てくることが課題になります。例えば、化学薬品を用いた精密で細かい作業の場合などです。そのような場面では表を作ったり、研修動画を見せたりして、「目で見て」理解してもらっています。また、外国籍社員の中でも、日本語が堪能な社歴の長い社員が間に入り、彼らの母国語を通して説明してもらうこともあります。外国籍社員にはベトナム出身の方が多いので、先輩であるベトナム出身のフェンさんの存在が大きいです。 |
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一緒に働いて、感じたことや変化はありますか?
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阿部さん
外国籍社員の採用を始めた当時は、日本人社員の中に戸惑いがありましたが、今はそのようなことはないです。様々な国籍、文化の人がいるのが当たり前の環境で仕事をしています。日本人社員も外国籍社員も、個人の意識を高めるとか、考え方を変えるというよりは、一人一人が仕事の仲間としてコミュニケーションを取っています。例えば、イスラム教徒の方は、お祈りの時間が決まっているのですが、仕事中でもお祈りの時間になれば、許可は必要なく、本人のタイミングでお祈りに行ってもらっています。今ではそのようなことは、社員皆が当たり前だと思っています。 |
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3.社員の声
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普段どのような仕事をしていますか?
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フェンさん
私は、品質管理の仕事をしています。他のベトナム人社員の通訳と作業指導も行っています。以前は工場での作業も行っていました。その経験を生かして皆が働きやすいように、指導やサポートを行っています。
リフキさん
エンジニアとして働いています。弊社には、世界一の技術があると感じています。そういった場所で働くことで、プロエンジニアになれるよう、これからもより一層頑張りたいと思います。
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入社を考える外国籍の方々へ向けてアドバイスはありますか?
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フェンさん
仕事を始める前は、この会社は大丈夫だろうか、失敗もたくさんするかもしれないと心配になることもあると思います。しかしここでは、他の社員の方々が分からないことを分かるまで、一生懸命に説明してくれます。仕事も楽しくできています。
リフキさん
SNSから伝わる印象や歴史で伝わってきた印象、また、文化・風習の違いもあり、インドネシアでは日本に対してネガティブなイメージが伝わっていることがあります。しかし私自身、この会社に入社してその印象がガラッと変わりました。社員の皆さんはとても優しく、丁寧に接してくれます。この状況をぜひ皆さん自身の目で確かめて欲しいです。
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大変なこと、逆に仕事をしやすいと感じることを教えてください。
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フェンさん
大変なことは日本語です。基本的に社員は日本語を話しているので、その言葉が分からない時に苦労しています。しかし、会社の人はとても親切にしてくれます。分からないことがあればきちんと説明してくれるので、働きやすいです。
リフキさん
大変なことは勉強です。エンジニアリングは学ぶことが多いので、毎日新しいことを学び続けています。仕事をしやすい点としては、私はイスラム教徒で、毎日守らなければならないことがあります。この会社は、そういった文化にも理解があり、働きやすいと感じます。
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磯原工場で使用する道具の説明をしているフェンさん。
リフキさんと上司の方々。
会社全体が明るく、和やかな雰囲気で取材を進めることができた。
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4.今後の展望
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様々な国籍、文化を持つ人々と一緒に働くことでどうなって欲しいですか?
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阿部さん
社員が自分とは異なる文化の人と触れ合って理解することで、その社員の人生が一回りも二回りも豊かになってくれると嬉しいです。そこから海外に興味を持って、「国外の工場に行きたいです」と手を挙げてくれる人が出てきてくれるといいなと思っています。 |
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5.取材の中で生まれた質問
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学生のうちにどういう学びを得ることが良いのでしょうか?
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阿部さん
いろいろなことを経験することがいいのではないでしょうか。仕事の勉強は、会社に入ってからもできます。例えば自分がやったことのないことや嫌いなことでも、一度は経験してみると、世界が広がると思います。また、たくさん本を読むことも良いのではないでしょうか。自己啓発という意味でも、今後の将来につながると思います。 |
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これから外国籍の方を採用する企業に向けてアドバイスはありますか?
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阿部さん
日本人社員も外国籍社員も分け隔てなく接するのがいいのではないかと思います。何か特別な行動を起こすのではなく、普段通りでいいんです。外国籍社員に対してすごく優遇してしまったら、他の社員に対しても示しがつかなくなりますからね。もちろん、宗教とか食べ物とかは別です。生きるために必要な生活の一部であるわけだから、そこは離して考える必要があります。
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佐藤 舞果
(大学1年生)
将来働く企業選びの参考にしたいと思い参加しました。研修や取材を通じ、企業規模が大きくないからこその、D&Iへの取り組み方もあると感じました。就活の際には企業の規模ではなく、私自身が働きやすいと思える企業で働きたいと思うようになりました。製造業に対し、上下関係が厳しく緊張感があるイメージを持っていましたが、日東電気では互いを尊重し、皆が信頼し合いながら仕事をしていて、魅力的な会社だと感じました。
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横田 早紀
(大学4年生)
フリーペーパーを作っている家族から勧められたことがきっかけで、この事業に参加しました。活動が始まってみると、取材の準備や執筆などの時間があまりとれず、大学の授業とのやりくりが大変でした。取材を通じて、外国籍の方と良好な関係を結ぶためには、相互理解が必要だと気付いたので、これから生かしていきたいと思います。
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