多様性が生む力~ビジネスにおけるダイバーシティ~

ダイバーシティ経営の強みとは⁉ モデル企業のその後の取り組みについて伺いました。
2022年度紹介内容はこちら https://www.diversity-ibaraki.jp/score/taijinkai.html

 
 
社会福祉法人 泰仁会 D&I推進モデル企業      
「お互いさま」を合言葉に ワークライフマネジメントを利用者様の満足度向上へ
    左から 副施設長 谷さん、介護士 石井さん、施設長 高城さん、生活支援課長 國谷さん、事務長 大塚さん
■会社設立 1995年
■本社所在地 茨城県石岡市小倉442-1 
■事業概要 特別養護老人ホーム、グループホーム、デイサービス、ケアプランセンター、福祉サービス事業など
■従業員数 252人
■HP https://taijinkai.or.jp 
 
────2022(令和4)年度に、モデル企業としてお話をお伺いしました。その後の変化や反響はいかがですか。
      
高城施設長 
石岡市役所から広報紙の取材を受けました。外国籍とシニアの職員が取材を受けまして、人手不足の問題や、多様な人材の受け入れについて、取り組み内容をお話しさせていただきました。
泰仁会では、「働きやすい職場 働き続けられる職場 やりがいのある職場」を目指し、育児休業や、介護休業など様々な制度の整備に取り組んでいます。現在、職員数は252人で、18歳から82歳までの人が働いています。女性の管理職の割合は2022年の27.2%から33.3%に伸びました。また、平均勤続年数も7.5年から8.03年に伸びています。看護・介護休業取得の割合も80%を超えています。

國谷課長
職員が定着していると強く実感しています。理由としては、育児・介護についての制度整備の影響が大きいと思います。様々な事情で正社員として1日8時間は働けない人がいるのですが、「制度のおかげで働き続けられる」「ライフステージに合わせた働き方ができる」と言っています。
泰仁会では2003(平成15)年から、
様々な制度改革に挑戦してきました。
 
復職して改めて、泰仁会の風土は長い年月をかけて
磨き上げられたものだと気付きました 。

 
谷副施設長
利用者様の視点で考えたときに、長く施設にいる馴染みの職員が支援してくれることが安心につながります。そういった意味でも、職員が定着することは非常に重要なことです。また、定着するだけではなくて、退職後に復職する方もおり、非常に助かっています。
 
國谷課長
実は、私も、新しい資格を取ったことをきっかけに、こちらを退職した経験があります。しかし、いざ新しい環境に身を置いてみると、泰仁会との環境の違いに驚きました。泰仁会は、ワーク・ライフ・バランスがとりやすい環境で、職場に活気があると改めて感じました。
 
────石井さんは育休を取られたとお伺いしました。詳しく伺ってもよろしいですか。

石井さん
私は28日間育休を取りました。取得した理由としては、上の子が2歳で、いやいや期真っただ中での2人目の出産のため、妻の負担が大きく、抱えきれない状態だったからです。
泰仁会では、育児休業制度がしっかりと整備されています。上司からも、「制度は使うためにあるものだから、取得してみてはどうか」と、背中を押していただいたことが大きかったです。職場全体が育児に理解がある雰囲気なので、不安なく利用することができました。
子供たちと一緒にいる時間が長く取れたことで、愛情がすごく深まりました。妻との会話の時間も増え、育児についてじっくりと話し合い、助け合う関係が強まったと思います。妻は、「気持ちに余裕ができた」「不安や悩みをすぐに相談できた」と、喜んでいました。また、「同じ温度感で育児に関われたことがすごくうれしかった」とも言ってもらえて、育休を取得して本当に良かったなと改めて思います。かけがえのない28日間でした。

グループ全体に育児休業を取得しやすい雰囲気があります。
────育休について、他の職員の取得状況はいかがですか。

高城施設長
育児休業取得率は100%です。私も育休を取得しました。性別に関係なく皆さんが取っていて、職員同士、「お互いさま」と思って理解し合っています。

石井さん
日頃から「お互いさま」という言葉が、合言葉のように飛び交っているので、それが育休を取得する上で大きいと思います。
育休からの復帰については、多少の戸惑いがありましたが、施設の皆さんに親切にサポートしていただけたので、不安はすぐに解消されました。グループ内の別施設に異動してからも、いろいろと配慮をしていただいて、安心して働くことができています。今回の育休取得は、自分の成長につながる大きな転機になりました。
 
 
────ダイバーシティスコアチャレンジに挑戦いただきました。どんなことをお感じになりましたか。

いつも当たり前に取り組んでいることこそ、
時々振り返って考えることが大事なのかもしれません。






 

高城施設長
全体的にすでに取り組めているという結果でしたが、「LGBTQ」の分野については、今後、しっかりと学んでいかなければならないと感じています。また、「障害」の分野についても、努力が必要だと思っています。現在、障害がある方を数名雇用していますが、障害の有無にかかわらず皆が一緒に働けるよう、様々な工夫を行っていくことが大事だと思いました。

大塚事務長
スコアチャレンジは、管理職の方々と一緒にチェックをしました。「この項目は当たり前にやっているよね」という会話が自然と出ました。ダイバーシティの取り組みを、私たちはごくごく当たり前のことと捉えているのだと思いました。
その中でも管理職の理解促進を図るため、これまでに、研修の機会を多く持ってきました。
また、現場からの声を制度に反映させるために、管理職とコミュニケーションをとり、必要なことを話し合ってきました。結果、今のように制度が整い、定着してきたと感じています。

谷副施設長
管理職が理念をしっかりと受け止め、伝え続けていくことが大切だと思います。そのために、法人本部だけでなく施設や事業所の職員も集まって推進会議を行うなど、理解促進に向けて学び続けています。また、日頃から「お互いさま」を合言葉にして誰もが制度を利用しやすい雰囲気を作っています。
 
 
────前回、課題として挙げられていた「地域への情報発信」についてはいかがですか。

高城施設長
利用者様のご家族や地域のボランティアさんにも、実際に現場を見ていただくようにしいています。まずは、地域にも受け入れられるように、外国籍職員やシニア職員が一生懸命に働いている様子を知っていただくことがすごく大事だと思っています。ホームページやブログも工夫して、様々な発信をしています。介護は家族だけでは回らないことも理解していただけるよう努力しています。

大塚事務長
シニア職員も、元気なうちは働き続けたいと言っています。働くことは、活力の源であり、当施設が大切な居場所になっていると感じています。働く気力があれば、何歳であっても働いて欲しいと思っています。ちなみに最高齢の方は82歳で、本人の希望で週4日勤務です。ライフステージに合わせて、柔軟な働き方を提供できていると感じていますが、それは会社の中で働き続けられる、時間も選べる、役割も選べる、という点が大きいと思います。法人として、職員の皆さんに貢献できていると感じています。

高城施設長
私たちは、インドネシアやフィリピン、中国、ネパールなど、いろいろな国籍の職員と一緒に働いています。外国籍の職員は、高齢の方を敬う気持ちが強いです。これは、利用者様に対する心構えとして根本となる部分です。
一方で、利用者様に優しくなり過ぎてしまう傾向があり、何でも話を聞いて、やってあげてしまうことがあります。自立支援の考え方を理解するには、もう少し時間が必要だと感じています。
 

外国籍の職員は、施設の中でも外でも大切な仲間です。
滞在期間に制限がありますが、ずっと一緒に働きたい仲間です。
 






 
 
────「ダイバーシティ経営」という軸で考えたとき、泰仁会様の今後の展望をお聞かせください。

制度的には、法律が定める水準を上回っていますが、
更に改正するところはないか検討しています。








 

高城施設長
利用者様の多様なニーズへの対応を考えると、職員の個性はもちろん、組織としての強みを生かしていくという事が、いかに大切かが分かります。この業界がさらに魅力的になっていくためにもダイバーシティ経営の視点は必要です。
私たちの仕事は、人間を相手にする仕事です。人と人が触れ合う機会が多いからこそ、多様な人々の違いを受け入れていくことが大切な職場です。その点で、「ダイバーシティ経営」は、介護業界に適していると思います。

大塚事務長
私は、職員のワークライフマネジメントの推進が、利用者様の満足につながっていくと思っています。職員がそれぞれの力を発揮できるようなスキルアップの機会を提供し、心の底から「ここで働けて良かった」と思うことができるようさらに改革を進めていきます。
これまで改革してきた制度の多くは、職員の声によって作られています。毎年、今後どんなものがあったら良いかと問いかけ、皆さんから意見を書いたメモをもらっています。それらをノートに貼って、なるべく多くの意見を吸い上げる努力をしています。その中から、「これは大事な視点だな」「これからの時代に必要だな」ということを考えながら、毎年の計画を作っています。職員の声を聞きながら改善しているので、自分たちの意見が吸い上げられていると実感してもらえているのではないかと思っています。
今後も、生き生きと活躍できる環境を作り、一人一人の目標や夢の実現ができる職場づくりに努めていきます。
 
國谷課長
経営層の方々が、制度や風土の土台を作ってくださっているので、私たちはしっかりと運営に生かしていきたいと思っています。職員が、どうしたら働きやすくなるか、そして、働き続けられるか、自分達も具体的に考えていかなければならないと思います。自分自身もアップデートしながら、長年育んできた風土を伝え続けることが、管理職の使命だと思っています。

いつでも意見を交わし合える、「改革」に前向きな仲間と働いています。

 
谷副施設長
私たちはチームで仕事をしています。利用者様の満足を考えたとき、一人の職員の力だけではサービスの向上はできないと思っています。職員は、国籍も年齢も様々ですが、力を合わせて取り組んでいます。これからも、利用者様のご家族をはじめ、いろいろな方々にご理解をいただきながら、恵まれた環境を生かして利用者様に還元していきたいと思います。

石井さん
価値観は人それぞれです。一人一人の価値観をそのまま受け止めていくのが、多様性の推進だと思います。人それぞれの価値観を大切にしつつ、企業理念をしっかりと踏まえ、今後の仕事に生かしていきたいと思います。