事例集 Ⅳ


<PDF版はこちら>事例集 社会福祉法人泰仁会《21.2MB》
 
 
社会福祉法人
泰仁会
それぞれが活躍できる環境づくり
会 社 設 立 1995年1月9日
本社所在地 茨城県石岡市小倉442-1
事 業 概 要 特別養護老人ホーム、グループホーム、デイサービス、ケアプランセンター、福祉サービス事業など
社 員 数 256人
H    P https://taijinkai.or.jp

 
 
取材登場人物
 
施設長
髙城 裕 さん
法人本部事務長
大塚 由美 さん
介護福祉士
宮本 泉 さん
EPA介護福祉士候補者
ソリベン クリスティン
ジョイ エストレス
(シージェイ) さん
介護福祉士
森田  斗志 さん

取り組み内容
多様な人材受け入れ

・外国籍人材の雇用
茨城県内の福祉施設として初めてインドネシア人のEPA介護福祉士候補者を受け入れた。
現在、フィリピン人のEPA介護福祉士候補者の受け入れを行っている。
今後の介護人材の減少を見据えて、いち早く外国籍人材を受け入れている。地域住民と施設利用者らに紹介や説明を行い、受け入れの理解をいただけるように工夫して対応している。

シニア人材雇用 

再雇用制度を2段階で設けている。第一定年は65歳でその後の待遇に変更はなく、第二定年の70歳以降も継続希望の場合はパート社員として雇用。また、個別面談で希望を聞き、可能な限り本人の希望に応じた形で勤務を継続してもらえるよう配慮している。
人生100年時代を見据えた長期雇用の実現に向けて取り組みを推進中。 
 
 
取り組みを始めたきっかけと経緯
 
クエスチョンダイバーシティ推進啓発にどのように取り組まれていますか?
髙城さん
泰仁会は主に外国籍人材の受け入れ、高齢者の雇用、男女の育休取得推進など幅広い取り組みを行っています。


クエスチョン外国籍人材の受け入れを始めたきっかけを教えてください。
髙城さん
きっかけは介護業界の人材不足です。人材が不足すると、利用者の方の安定的な受け入れが難しくなるため、外国の方や多様な人材を積極的に受け入れる必要がありました。そこで泰仁会は2008年から、外国の方が日本で就労しながら介護福祉士資格取得を目指す制度であるEPAを活用して、受け入れを始めました。
 
施設長の髙城さんは、この仕事に最も必要なことは優しさであり、人と人との仕事なので、
思いやりをもって取り組む人材が最も必要であると話していた。


クエスチョン外国籍人材の受け入れの際に援助してもらっている機関はありますか?
髙城さん
外国籍介護人材支援を行っている国際厚生事業団のJICWELSという団体です。そこに申請し、受け入れ施設として認められると、相手の国々から応募する方と私たちの施設とでマッチングする形です。この施設ではインドネシアとフィリピンの方を中心に、法律に基づいた受け入れを行っています。


クエスチョンシニア人材活用の取り組みについて具体的に教えてください。
髙城さん
高齢者の方には、働く条件を変えて採用することを実施しています。他の職員と同じ業務を希望する方もいますが、介護助手としての採用や夜勤をしないなど、個人に合った働き方をしてもらっています。現在256人いる職員のうち、60歳以上が39人、70歳以上が22人います。高齢者の方は勤続年数の長い方が多く、50歳から第二の人生として介護業界に入り、働き続けている方もいます。また雇用に関して年齢の条件は無く、やる気や業務との相性などを重要視しています。
 
 
取り組みに対しての現状・課題

 
クエスチョン外国籍人材の受け入れの現状と生じた課題への対策を教えてください。
高城さん
EPA介護福祉士候補者をインドネシアやフィリピンより、毎年法人全体で10人ほど受け入れています。また、2021年からは特定技能1号という新しい枠を設け、1人から2人ほど受け入れをしています。一方で多国籍になると、宗教や文化的側面での違いが出てきます。その点については、担当者を置き、食事や買い物などの生活に対してサポートをしています。また、受け入れ開始時は外国の方への地域の方々からの理解が薄いことがありましたが、利用者やそのご家族への説明会や職員への勉強会を実施して理解を深めてきました。今でも、言葉や文化の違いで認識の違いが生まれたりもしますが、話し合いや勉強することを心掛けることで解決できています。


クエスチョンシニア人材の働き方を教えてください。また、課題はありますか?
高城さん
身体的負担を考慮して、高齢者の方は負担の少ない部署に配置しています。例えば、比較的介護負担の少ない利用者がいる施設に配置換えをしたり、食事などのサポート、洗濯や掃除をする部署に入ってもらったりなど、個人に合った業務を割り当てています。課題としては世代間の価値観のズレです。価値観の同じ人間なんていないですが、60代・70代の方と20代の方の価値観は本当にかけ離れています。同じ価値観を持つために職員で集まりワークライフ推進会議を行ったり、コアバリュー(※)をつくるなどして価値観のズレをなくしています。また、お互いの考えを認め合い、悩んでいることには声を掛け助け合う、それが大切なのだということを日々職員へ伝えるようにしています。そうした日々の積み重ねがあって、価値観のズレによる対立は少ないのだと思います。
(※)コアバリュー:企業が経営を行う上で重要とする価値観のこと


クエスチョン育休取得にも力を入れているとお聞きしましたが、具体的な成果を教えてください。
大塚さん
女性の育児休暇取得者は100%を達成しています。また、子育て支援休暇や育児短時間勤務制度、託児所の設置などを実施しており、職員が働き続けられる職場を目指しています。また、男性職員も子育てや看護に関する休暇を多く取得しています。育児休業の取得促進を始めた当初は、男性の取得が進みませんでしたが、20日未満の育児休業取得者に対して、現行の「育児休業給付金」とは別に、給与の50%を法人として保障することで男性も育児休業を取りやすくしました。最近では若い男性職員が自ら育児休業を取りますと言うようになりました。制度を策定しても職員に活用してもらえなければ意味がありません。そのため、持続的に活用してもらえるような職場の風土づくりに力を入れています。

  
法人本部事務長の大塚さんは、風土づくりが大切だと話していた。
髙城さんが、職員の自由な発言を認めているからこそ、制度の改革ができていると感じた。


 
社員の声

 
クエスチョン宮本さんはどのような制度を活用していますか?
   または、活用したことがありますか?

宮本さん
子育て支援制度を活用しています。子どもを育てる前は、仕事で介護をしているから子育てもできるだろうと思っていました。でも実際に母親になると、子育ては想像よりも大変であることを実感しました。子育ての知識を増やす勉強をしたいと思っていても、仕事をしていると、どうしても自分の時間が取れません。一方で仕事を辞めると、自分のキャリアや成長を止めてしまうと思い、人生への迷いを感じていました。しかし、泰仁会の子育て支援制度を利用したことで、自分の時間を確保しながら勉強もしつつ、仕事にもやりがいを感じながら生活することができるようになりました。泰仁会は、女性が何かをあきらめることをしなくても良い制度が整っていると思います。


クエスチョンEPA介護福祉士候補者のシージェイさんは、泰仁会でどのように働いていますか?
シージェイさん
泰仁会には様々な仕事があります。外国人は、勉強と仕事の両立や日本の文化への適応など、忙しくて生活がままならないこともあります。しかし、施設では学習支援や買い物のサポートもしてくれますし、休日には行きたいところにも連れて行ってくれます。分からないことは施設の同僚に聞けば教えてくれますし、利用者の方は私たちの国について興味を持ってくれます。大変なこともありますが、支え合って仕事ができています。 
 

介護福祉士の宮本さん。
事務長の大塚さんが制度の使い方や給付金の利用などについて相談に乗ってくれたそう。
「職員個人の働き方を親身に考えてくれる職場だと実感した」と話していた。



「職員も利用者さんも優しくサポートしてくれるんです」と、
風通しの良い職場だと、自身の経験を交えて語られたシージェイさん。

 
クエスチョンシニアとして、働く中で感じていることはありますか?
森田さん
仕事をする中で年齢のギャップを感じることがありますし、IT業務への苦手意識などもあります。でも、分からないところがあるたびに、若手社員に教えてもらったり、手伝ってもらったりしているのでうまく仕事ができています。私は53歳からこの泰仁会で働き始めました。親の介護をしたことがきっかけでこの仕事に興味を持ちました。 そこから介護の仕事をしてみようかなと思い、勉強を頑張って資格(介護福祉士、ケアマネジャー)を取りました。その後20年間、こちらでお世話になっています。
 
介護福祉士の森田さん。
いつか自分が介護される立場になったとき、されて嬉しいことは何かを常に考えながら仕事をすることを心掛けている。
お仕事の様子。
利用者に寄り添う宮本さん。


 
今後の展望

 
クエスチョン今後の展望として、どのようなことを考えていますか?
髙城さん
今後は、もっと地域の方々に対して、介護の魅力や法人の良さをアピールしていこうと考えています。やはり、この法人、施設が無くなったら困る方がいるわけですから、無くさないために自分たちはどうするのかを考えなければならないです。そのためには、事業を増やすこともあるかもしれません。地域の方々に良さを分かってもらえれば、採用にも結びつくと思います。もう一度基本に戻って、地域でのアピールを増やすという方針を考えています。


クエスチョン地域を良くしていくうえで、目指していることはありますか?
髙城さん
地域への定着率を上げたいと思っています。そのためにそれぞれのライフステージに合わせた制度をつくり、定着率を上げる取り組みをしています。泰仁会で働いたことがきっかけで、この地域で生活する方が長く住み続けられるよう、私達としても地域づくりに向けて頑張ってはいますが、交通の便など、まだまだ課題があります。そういった問題には、当法人も含めて、地域一丸となってサポートの充実に取り組みたいと考えています。

 
 
 
取材の中で生まれた質問
 
クエスチョンコロナ禍で変化したことはありますか?
大塚さん
外国籍人材は受け入れの段階でストップし、採用計画の人数に対して不足が出てしまうことがありました。他にも、日本に来る期間が当初より数カ月ずれてしまい、本来、一定期間日本語の勉強をしてから迎え入れるところを省略しなければならないという問題も発生しました。
しかし、外国籍の先輩職員が通訳をしてくれたり、新規受け入れ人材のサポートができるようになってからは、その悩みも少しずつ解消していきました。また、コロナ禍で行動制限が求められたことにより、受け入れ人材には外出自粛などの我慢を強いることになりましたが、そのような状況下でも日本を楽しめるよう、食事や娯楽の面で周囲の職員がサポートをしながら交流を図っています。


クエスチョン働きがいのある職場であるために心掛けていることはありますか?
髙城さん
心掛けていることは、私たち自身が生き生きと働くことです。介護業界全体にマイナスなイメージがついているので、自分たちが生き生き輝いて働いているところを見せるようにしています。そうすることで、自分がブランドになって働きがいのある職場であるというイメージアップにもつながると思います。こういった意識は、高校や専門学校の先生との情報交換の際にも役に立っています。生徒の情報を聞きながら、現場の良い環境や、やりがいの話もしっかり伝えられるからです。仕事の大変さとやりがいを説明して、学生とのマッチングを行うことで採用にもつながっています。

 
取材風景
泰仁会の皆さんへの取材は約2時間行いました。ダイバーシティのことから、介護業界全体の問題まで、たくさんの質問に答えていただきました。泰仁会さんは外国籍人材の受け入れ、高齢者の雇用やワークライフマネジメントに力を入れています。幅広い取り組みを行ってきた施設長の髙城さんと法人本部事務長の大塚さんの熱意あるお話しぶりに、私たちも聞き入ってしまいました。また、現場で働いている職員の方3人にも出席いただき、生の声を聞くこともできました。
 
取材を終え、泰仁会の皆さんと記念撮影。
たくさんの人達から話しを聞くことができ、
とても有意義な時間を過ごした。
取材時の一コマ。
高城さんと大塚さんの熱い想いに触れた。


 
取材を終えて

学生リポーター 泉さん
学生リポーター
今野 杏南

 
訪問取材のなかで、職員同士や施設全体の雰囲気が良いことが印象的でした。これは多様な人材の受け入れや働きやすい環境の構築という活動の過程で、個性への理解や寛容さを各職員が身につけたことによるものなのかもしれません。このように、ダイバーシティの推進は組織全体の機能を上げることにつながるものだと感じました。世間からの介護業界への印象はネガティブなものが多いですが、泰仁会さんのような魅力的な企業を記事を通して伝え、少しでも介護業界に興味を持ってくれる人が増えたらいいなと思います。


学生リポーター
奥平 英幸
今回の取材では、ダイバーシティ項目についてお話を伺いました。特に印象に残っていることは、みなさんの熱意でした。新しい制度や取り組みを行うことには困難も多いですが、施設長の髙城さんや、事務長の大塚さん、職員の皆さんが働きやすい環境をつくるという思いをもって取り組んでおられるからこそ、泰仁会さんでは取り組みが実行しやすいのだと思いました。こういった風土づくりが働きやすい職場づくりの第一歩なのだと改めて感じました。私もこの風土を記事にして社会に広めていきたいです。

学生リポーター 松岡さん
学生リポーター
坂本 いおな
 
今回の取材で印象に残ったことは、職員の皆さんが制度を活用できる体制ができていることです。髙城さんをはじめ、大塚さんが職員それぞれの悩みに寄り添い、どの制度が活用できるか率先して声掛けを行っていました。そうした本部の体制があることで、制度の活用が定着し、職員の皆さんが安心して業務を行うことができているのだと思います。泰仁会さんの記事を通してダイバーシティの理解を広めるためには、制度をつくるだけではなく、活用を促進する体制面が重要であると感じました。


 
企業側からのコメント 今回、茨城県ダイバーシティ推進・啓発事業モデル企業に選んでいただき、非常にありがたく思います。自分たちが取り組んでいることが認められ嬉しく感じています。私たちの法人は組織風土づくりを大切にしておりますが、組織風土づくりは、理念や方針、ルールを組織全体が認識できているかが重要になります。そして、組織風土をつくるのは職員自身であることも伝え続ける必要があります。働きやすい職場環境になれば、職員のやる気やモチベーションの向上、職員の定着率の向上にもつながります。今野さん、奥平さん、坂本さん、当法人を取材してくださりありがとうございました。自分自身の成長が企業の成長につながります。今後も茨城県内のダイバーシティ推進に取り組んでいってください。
施設長 髙城 裕  

令和5年2月22日公開